兄弟。
ロック系のアーティストが多数集まって大々的なライヴを繰り広げたり、ジャズ系のアーティストが一堂に会してライヴをする「フェスティヴァル」的なものはこのところ、毎年いくつも行われてきた。だがソウル系のアーティストが集うイヴェントはあまりなかった。そんな中で、ついに日本においてソウル・ミュージックを愛して続けているミュージシャンたちによる大々的なイヴェントが行われることになった。それが、この『SOUL
POWER TOKYO なにわ SUMMIT 2007』だ。
日本でアメリカのR&B、ソウル・ミュージック、ブラック・ミュージックというものが一般のファンに注目されるようになったのは、1970年代に入ってから。そうしたものを聴いて影響を受けた若きミュージシャンたちが、自ら日本でソウル・ミュージックを作ろうという動きを見せ始めたのが1970年代後半、1980年代に入ってからのことだ。
そうした中で、東京生まれの鈴木雅之は映画『ロックン・ロール・エクスプロージョン(原題Let The Good Times Roll)』(1973年9月末日本公開)などに衝撃を受け、1950年代にアメリカで流行した黒人音楽の形態のひとつ、ドゥ・ワップに傾注し、そうした音楽を志すようになる。彼はアメリカの黒人のドゥ・ワップ音楽への愛を、自ら顔を黒く塗ることによって表し、それまでに日本の音楽シーンにはなかった独特のソウル・ミュージックの世界を作り上げた。1980年のことだ。彼が生み出したグループ、シャネルズは日本独自のドゥ・ワップ・グループとして一世を風靡。グループは、その名をラッツ&スターとし、さらに鈴木はソロシンガーへと移行していった。
そんな日本のソウル・ミュージック、シャネルズ〜ラッツを聴いて育ち歌手を目指してきた若き男たちがいた。それが村上てつやであり、酒井雄二であり、彼らのグループ、ゴスペラーズ。そして、TAKEを含むSkoop
On Somebodyだ。
彼らは洋楽であるアメリカやイギリスのソウル、R&Bをずっと聴き続けてきた。そして、それを日本という土壌で、自分たちの体内にソウルの遺伝子を組み込み、そこから日本独自のソウルのある音楽を作り出そうとした。彼らの出発点は時代こそ若干の違いはあれ、ソウル・ミュージックだ。彼らはソウル・ミュージックの元に皆、ブラザー(兄弟)なのだ。
そんな彼らは、自分たちがそれぞれの土俵で活躍していくうちに少しずつ接点を持ち始める。鈴木雅之、佐藤善雄(ラッツ&スター)とゴスペラーズの村上てつや、酒井雄二らは、2005年の夏、鈴木雅之25周年企画の一環として参加した『情熱大陸』のイヴェントで、ワンショット的にひとつのヴォーカル・グループを作って登場した。それが、ゴスペラッツの誕生の瞬間であった。
その後、桑野信義も正式に参加を表明。このワンショット的なゴスペラッツの誕生が次々と奇蹟を呼び起こす。ラッツを彷彿させるゴスペラッツの登場は、ライヴ会場のファンを熱狂させた。そしてその評判があまりにすごかったため、スタッフからは一回のライヴでは終わらせず、CDというかたちに残してほしいとの要望が強くなった。そして、CD制作の話が進む中で、CDを出すなら、プロモーション用ビデオも作ろう、ライヴ・イヴェントもやって人々の前で歌おうという方向へと繋がっていった。
ソウル・パワー。
鈴木雅之、ゴスペラーズ、ゴスペラッツ、Skoop On Somebodyと集まってライヴをやるなら、もっとソウル系アーティストを集めて一大イヴェントにしたらどうか、となる。まさに一つのことが次々と別のことを引き起こしていく連鎖反応が起こった。
こうして彼らの趣旨に賛同した多くのソウル・アーティストが、今日、この場所に集った。コンセプトは、「ソウル・サミット」。ソウル界の頂上にいる男たちが集まり、ソウル・パワーを輝かせるのだ。
ここに出演するアーティストたちはみなソウル・ミュージックの元に固い絆で結ばれている。例えば、ゴスペラーズ村上てつやからこのイヴェントへ誘われたSkoop
On SomebodyのTAKEは、こういう。
「まあ、一も二もなく考えず二つ返事で。最近特にソウルのイヴェントってなかったですよね。ロックのイヴェントはね、洋楽も邦楽も結構いろいろあるんでしょうけど。やっぱり日本の中で最近R&Bブームみたいなこと言われてたけど、自分自身実は横の繋がりって希薄やねんなぁなんて思ってたりしてたんで。ただ、繋がる人とはずっと繋がってたんですよ。ゴスペラーズと札幌で共演したりとか、マーチンさんとは宮崎の時に出してもらったりとか、で、何かやっぱりソウル好き不良ってとこで繋がって、普段別に「マーチンさん元気ですか〜」とか「リーダー何してんの〜?」とか電話したりしませんけど、何かソウルというキーワードで繋がってるんちゃうかなぁみたいなメンツですね。僕らにとっては。だから、単発のこういうイヴェントありますよって時に、何の迷いもなく、ハイハイって感じだった」
このイヴェントでは、多くのソウル系ミュージシャンたちが一堂に会す。そして、彼らが自由にコラボレーションし、まだ違った世代の融合がある。鈴木雅之がこうまとめる。「ファン層も例えば、親がシャネルズ、ラッツのファンで、子供たちがゴスペラーズ、スクープのファンだったりするんだよね。やっぱりそう考えたときに家族とか、とても大切な人と、その大切な時間を楽しんで欲しいって言うのが俺たちにとってすごくあるじゃない?その中で家族とか、例えば今、親子の共通の話題ってなかなかないでしょ。それがやっぱり音楽だったり、そのイヴェント自体で共通した話題を持てたっていうことは結構凄いことなんじゃないのって改めて感じられるよね」
この「SOUL POWER SUMMIT」は親と子という世代間の架け橋ともなり、そこに集まった人々がひとつになって楽しむ空間となるだろう。すべての観客が楽しむこの時間の流れは、まさにソウル・パワーのオーラが会場すべてを覆っている瞬間だ。
[July 1st, 2006: Yoshioka Masaharu The Soul Searcher]
An Early Bird Note